朝廷から下がると、毎日のように春の着物を質に入れ、毎日、曲江のほとりで酔いつぶれて帰る。酒の借りなら、行く先々どこにでもある。人の一生で七十まで生きる者は、昔からめったにいないのだから。花のあいだを縫う蝶が奥のほうに見え隠れし、水面に尾をつけるとんぼが、ゆるやかに飛んでいく。春の景色に言づてしよう。おまえとともに、わたしも移ろっていくのだ。しばらくのあいだでいい、たがいに愛であって、背きあわずにいようと。

杜甫『曲江二首』
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杜甫の名言

人生七十、古来稀なり

書き下し朝より回りて日日春衣を典し、毎日江頭に酔いを尽くして帰る。酒債は尋常行く処に有り、人生七十古来稀なり。花を穿つ蛺蝶は深深として見え、水に点ずる蜻蜓は款款として飛ぶ。伝語す風光共に流転して、暫時相賞して相違うこと莫れと。

原文(漢文)

朝回日日典春衣,每日江頭盡醉歸。酒債尋常行處有,人生七十古來稀。穿花蛺蝶深深見,點水蜻蜓款款飛。傳語風光共流轉,暫時相賞莫相違。

出典
『曲江二首』其二(『全唐詩』巻225)(758年頃)
確認
原典で確認原文が載っている資料で、該当する箇所を確かめました。確認した資料
訳
現代語訳:名言の栞

この言葉の背景

安史の乱のあと、長安の朝廷で左拾遺という役についていた杜甫が、思うように志を果たせない春に、都の名所・曲江で詠んだ詩です。七十歳を「古稀」と呼ぶのはこの句から。長寿を祝う言葉として知られますが、もとは、人の命は短いのだから、移ろう春をいま味わおうという嘆きと開き直りの句です。

今日の生かし方

今日は、近くの公園や川べりを十五分だけ歩き、蝶やとんぼ、花など季節のものを一つ見つけてみてください。「この景色もわたしも移ろう」と思うと、目の前の時間が少し濃くなります。

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