人里に小屋を建てて住んでいるが、車や馬のさわがしさは聞こえない。どうしてそんなことができるのかと、人はたずねる。心が世間から遠く離れていれば、住む場所も自然とひっそりするものだ。東の垣根のもとで菊を摘み、ゆったりと南の山をながめる。山の気配は夕暮れにいっそう美しく、鳥たちが連れだってねぐらへ帰っていく。このなかにこそ本当の意味がある。言葉にしようとしたときには、もう言葉を忘れていた。

陶淵明『飲酒二十首』
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陶淵明の名言

心遠ければ、地おのずから偏なり

書き下し廬を結んで人境に在り、而も車馬の喧しき無し。君に問う何ぞ能く爾るやと、心遠ければ地自ずから偏なり。菊を採る東籬の下、悠然として南山を見る。山気日夕に佳く、飛鳥相与に還る。此の中に真意有り、弁ぜんと欲して已に言を忘る。

原文(漢文)

結廬在人境,而無車馬喧。問君何能爾,心遠地自偏。採菊東籬下,悠然見南山。山氣日夕佳,飛鳥相與還。此中有真意,欲辨已忘言。

出典
『飲酒二十首』其五(5世紀初め頃)
確認
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訳
現代語訳:名言の栞

この言葉の背景

役人勤めを辞めて郷里の田園に帰った陶淵明が、酒を飲んだあとの思いを書きつけた連作二十首の第五首です。都会を離れたから静かなのではなく、心が名誉や利益から離れているから静かなのだ、とうたいます。「悠然として南山を見る」の句は、夏目漱石が『草枕』で俗世を離れた境地の例として引いています。

今日の生かし方

人の多い場所や忙しい職場から離れられない日でも、帰り道に5分だけ、空や山や木をながめる時間をとってください。場所を変えなくても、心の距離をとれば静けさはつくれます。

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